ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 帰り道の車の中で、日華さんは肩の荷が降りたように息を吐く。


「ああ、めちゃくちゃ緊張した……。どの舞台や映画よりも緊張したかもしれない」

「ごめんなさい、うちの家族が……」


 結局最後は全員サインを書いてもらうという自由っぷり。頼むから周囲には言いふらさないで、とキツく口止めした。


「いいご家族だね」

「騒がしくてすみません……」

「いや、とても素敵だなと思ったよ。星來にも良くしてくださってるし」


 ちなみに星來は「ばーたんとことまる」とのことで、明日迎えに行くことになっていた。
 日華さんはちょっぴり寂しそうにしていた。


「まだまだ頑張らないとな」
「そういえば予告映像が解禁されてましたよね。すごく楽しみです」
「めちゃくちゃ面白いよ。何も話せないのが歯痒いな。主題歌もものすごく良いんだ」
「楽しみですね」
「買い物して帰ろうか」
「じゃあ日華さんは車で待っててください」
「えっなんで!?」
「当たり前じゃないですか。今日の格好だと絶対バレます」
「あかりと二人で買い物するの、密かな夢だったのに」
「また今度ですね」
「その代わり、」


 日華さんは顔を近づけ、耳元で囁く。


「――夜は二人きりでゆっくりしよう」

「っ!」


 一気に熱が急上昇。多分私は一生この人にドキドキし続けるのだろうな、と思った。


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