ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
確かに兄貴も壱葉も昔からモテていた。特に兄貴は既婚者になっても人気が衰えていない、と義姉さんがぼやいていたことがある。
「俺昔は兄弟がコンプレックスだったんだ。
兄貴は昔から優秀で何でもできて医者にもなれて。
壱葉はあれでグローバルなところがあって留学経験もあるし、色んな国に友達がいる。末っ子だからか誰よりも伸び伸びしてるし、それに比べて俺は何も持ってないなぁって」
兄のような優秀な頭脳も弟のような社交性も自分にはない。無個性な自分に劣等感を抱いていた。
真面目な兄貴とフリーダムな壱葉はよくぶつかることがあり、その度にどっちつかずの仲裁に入っていた。人とぶつかる程の信念のようなものも持ち合わせていなかった俺は、とにかく二人を羨ましく思っていた。
「そんな時に演劇と出会ったんだ。役を通して全然違う人間になれる、それがものすごく面白かった。
突き詰めれば突き詰める程のめり込んでいった。
そして、あかりと出会ったんだ」
「私ですか?」
「初めてファンだって言われて、驚いたけどすごく嬉しかった。今まで無個性で無価値だと思っていた自分に、初めて色がついたんだ」
「日華さんは無価値なんかじゃありません。唯一無二の素敵な役者さんです」
「ありがとう。あかりがいてくれたから、今の自分があるんだよ」