孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 私の言葉で美しい眉間に皴が寄る。慌てて「なーんて」と付け足しジョークにしようとすると、形のいい唇が不満げに動いた。

「違和感がある」

「え」

「『穂高さん』て、お前も穂高だろう。名前で呼べ」

 まっすぐな目に、戸惑う。

「そう言われても」

 改まって名前を呼ぶのは気恥ずかしい。

 まごついている私を逃がす気はなさそうに、彼はじっと見つめてくる。突き刺すような視線に居たたまれず、目を逸らしながら口を開いた。

「い、壱弥さん?」

 沈黙が流れて顔を戻すと、穂高壱弥は眉間に皴を寄せてこちらを見ている。

「えーと……壱弥?」

 さん付けが気に食わないのかと、思い切って呼び捨てにしても難しい顔のままだ。

「……壱弥さま?」

 まさかと思いながら口にした途端、形のいい唇がニヤッと弧を描いた。

「せっかくだが、今日はやめておく。久しぶりなんだろう。ゆっくり話してくるといい」

 そう言うと、彼はソファを立った。

「出かけてくる」

 短く言い残し、リビングをあとにする。その背中を見送りながら、頬が熱をもっていることに気づいた。心臓が慌ただしく鳴り響き、胸を押さえる。

「卑怯だ……」

 普段表情が乏しいから、ほんの少し感情が見えただけで動揺してしまう。

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