孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 促されるまま店の奥のカウンター席に着いた。隅っこには古紙回収に出すための雑誌や新聞が積まれている。そこに広がるのは、いつものオープン前の景色だった。たった一か月顔を出さなかっただけなのになんだか懐かしくて、しげしげと店内を眺めてしまう。

「やっぱりほっとするなあ」

 人工的な鉄などの素材とは異なり、古木はところどころ歪んでいて、それが自然のあたたかみを孕んでいる。その真ん中で忙しそうに立ち働いている人の好い店主と奥さん。

 穂高邸とは真逆の空間だ。無機質な大理石の家を思い浮かべながら、でも、と内心でつぶやく。

 不思議だけど、あの家も居心地は悪くないんだよなあ。

 やたらと大きくて人の息遣いが感じられない一見冷たい屋敷なのに、なぜか落ち着くのだ。その理由に、私は最近気づき始めている。

 仕込みの続きに戻ったリサさんと黙々と作業を進める修造さんに目を戻す。

 自分でも驚くような環境の変化なのだから、ふたりにもすぐには理解してもらえないかもしれないけれど、きちんと伝えようと思った。

 なにより、私は彼と結婚したことを後悔していない。

「リサさん、修造さん」

 呼びかけると、ふたりが顔を上げた。

「すみません。作業しながらでいいので聞いてください」

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