孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「純也は、なんて言ってましたか?」
「ひかりちゃんが勝手にいなくなったって」
ギュッと拳を握りしめた。当然だけど、純也が詳細を説明しているはずがない。
でも、と思う。ふたりに真実を告げる必要はないかもしれない。私が理由もなく勝手に出ていったと思われるのは癪だけど、これは私と純也の問題だし、忙しい店主夫妻に余計な心配をかけたくない。
「ちょっと事情があって、引っ越すことにしたんです。あ、これ良かったら」
ふたりの好きな『もみじや』のモナカを手渡すと、リサさんは袋を見下ろしてから気が抜けたように微笑んだ。
「まあ元気ならいいんだけど。今はどこに住んでるの」
穂高邸のある住宅地の地名を告げると、丸い大きな目がきょとんとまたたく。
「高級住宅地じゃない。どうしてまたそんなところに。そういえば就職決まったの?」
「リサ、さっきから質問ばっかじゃねえか。ちょっと落ち着けよ」
カウンターから飛んできた太い声に、リサさんがペロっと舌を出す。
「あ、ごめんつい。とりあえず座って」