孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 私の目の前まで来ると、彼は急に両手を合わせて頭を下げた。フードに隠れた顔は見えづらいけれど、ぎゅっと目をつむっている。

「俺はひかりだけだよ。だから帰ってきてくれよ」

「それは無理」

「なんで! ほんと悪かったって。ひかりがいてくれないと俺、安心して生活できないんだ。な、頼むから」

 土下座でもする勢いで謝られて言葉を失う。心配そうにこちらを見ているリサさんが今にも「まあまあ」と取りなしそうな雰囲気だ。こんなふうに謝られたら、私が許さないといけないような空気になる。

「なあ、ひかり頼む。このとおりだ」

 頭を下げ続ける純也に通路をふさがれ、外に出ることもできない。完全に逃げ場を失い、立ち尽くした。

「な、ひかり。俺が心を許せるのはおまえだけなんだ。だからアパートに帰ろう」

 哀願するように私を見上げ、手を伸ばしてくる。好きで付き合っていたはずなのに、ぞっとした。背筋が粟立って動けない。

「無理だってば」

 どうにか絞り出した声も純也にはまったく届かない。

「いいから、とりあえず帰ろう。話はアパートで聞くから。ここじゃふたりの邪魔になるだろ」

 腕を掴まれ、引っ張られたときだった。

「そうやって、心を許せる彼女を家に縛り付けて、外では別の女に刺激を求めるんだろう?」

「え……」

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