孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 いつも自信たっぷりで相手と対等であろうとする彼が、母を前に少し委縮しているように見えた。視線をわずかに下げ迷うように言葉を紡ぐ。

「体と心が同時に反応しました。そんなことはこれまでの人生で一度もありませんでした。理屈ではなく、本能でひかりさんに惹かれた。そうとしか……」

 はっきりとした口調で、彼は続ける。

「ただひとつ言えるのは、ひかりさんは私にとっても特別な存在だということです」

 頬が熱くなった。隣に座る彼が母親にまっすぐ告げた言葉が、私の胸をきゅっと掴む。

「そうですか」

 彼のぶれない視線を受けて、母親は相好を崩した。

「うん。あるわよね、理屈じゃないことって」

 壱弥さんの説明に納得したらしく、母は嬉しそうに繰り返す。ようやく覗いた柔らかな笑みに、私も肩の力が抜けた。

「じゃあ、壱弥さんそろそろ……」

 いつまでも仮想現実(わが家)に置いておくのも気が引けて声を掛けると、母親が声を上げた。

「え、もう帰るの? せっかくだからご飯食べていったら。といってもカレーだけど」

 壱弥さんにわが家の平凡カレーを食べろと!?

「いやいやこの人、忙しいから」

 母親のとんでもない提案についぞんざいな物言いをしかけた私を、彼が遮る。

「では、お言葉に甘えて」

「ええ!? 食べてくんですか?」
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