孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 まっすぐな視線にどきりとする。その視線を真正面から受け止める壱弥さんの表情はずっと変わらない。いつもの無表情とは少し違う、目に力がこもった真剣な顔に見える。

「どうしてひかりだったんですか?」

 母は真面目な顔で続ける。

「正直、この子には特別な能力はなにもない。そのへんにいるような普通の子です。もちろん私にとっては大切な娘ですけど、あなたにはもっと釣り合うような女性が周りにたくさんいたのでは?」

 本当にね、と思わず同意しそうになった。きっと誰もが不思議に思う。壱弥さんの結婚相手が私だなんて。

 それくらい私たちは不釣り合いなのだ。

 壱弥さんは母をまっすぐ見返し、静かに口を開く。

「においです」

 母親の顔がにわかに曇った。私もつい彼を見上げる。

 まさか、フェロモンの話をするつもり?

「におい? え? 体臭的な?」

 母が訝しげに問うと、壱弥さんは初めて言い淀んだ。

「いえ、嗅覚とでもいうか……」

 いつも滔々と話す彼には珍しく、言葉を選んでいるような間ができる。

「私はこれまで合理的に生きてきたつもりです。大学の専攻も理系ですし数字やデータをもとに行動を起こしてきました。しかし、ひかりさんと出会ったときに感じた衝動は、うまく説明ができません」

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