孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
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翌日の午後一時。実家までは電車を使うつもりだったのに、壱弥さんが手配してくれたらしく、玄関を出るとハイヤーが待っていた。車の脇には見慣れたパンツスーツ姿の女性が立っている。
「奥様を安全にご実家にお送りするように、穂高社長から言いつかっております」
そういって隣に乗り込んできた海野さんは、やはり私と目を合わせようとしない。
車が発進してしばらくしても、車内には沈黙が漂っていた。重い空気に耐え切れず、天気や会社の話などの話題を振ってみたものの、彼女は「ええ」とか「はい」とか気のない返事をするばかりで、明らかに私と会話する気がなさそうだった。
気まずい……。
これならひとりでも良かったのに。どうせ実家に帰るだけなのだから。
無表情のまま前を見ている彼女の横顔をさりげなく覗き見る。鼻筋のラインが美しく、何度見ても整った顔立ちだ。もう少し愛想よく笑えばとっつきやすいのに。ああそうか、むしろ男性が際限なく近寄ってこないようにわざと不愛想にしているのかも。
勝手なことを考えているうちにハッとした。
そういえば昨夜、私は彼女に醜態をさらしていたのだ。夜九時にリビングで泣いて喚いて、あげくキスをされてようやく落ち着いて……。いい大人が他人の前ですることじゃない。