孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 彼はいつも折り目正しくてこちらが気を抜けないから、たまにこうやって絨毯に直に座ってる姿を眺めるのも悪くない。

「やっぱり多かったですね。残しちゃってください。お昼に食べるので」

「料理、好きなんだな」

 普段はハウスキーパーさんが作ってくれるから私が手料理を振舞う機会はほとんどなかったけれど、どうやらお気に召してくれたらしい。

「昔から弟たちに作ってたので」

「そういや特技だったっけか」

 大量の料理を短時間で効率的に作ること。

 履歴書にダメ元で書いたアピールポイントを諳んじられて顔が熱くなる。

「覚えてたんですか」

 ほかに書ける特技がなかったから仕方ないとはいえ、就職活動用の履歴書に書く内容じゃない。

「忘れてください、今すぐ」

「ぴったりの特技だと思うが」

 そう言って、彼は私に書類束を差し出した。十数枚の綴りになっているそれを受け取って表紙の文字を読み上げる。

「『かぞく食堂』プロジェクト」

 先月行った居酒屋を思い出した。個室を利用した子ども食堂の見学。あのときの壱弥さんを見て彼にますます好感をもったのだ。

「基本的に運営はボランティアで賄うから、その手伝いという形になるが……やってみるか?」

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