孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
この人は深水さんがいるときはわりと感情が出るのに、私が相手だとほとんど表情が変わらない。端正な顔で感情が見えづらいと、美しいを通り越して恐ろしい。
「私にこれを見せて、どうしろと?」
昨日の社長面接のときには緊張して冷や汗をかいたのに、今は心が冷え切っているせいか彼と対峙しても焦りは一切湧かなかった。むしろ胸の奥に小さく怒りがくすぶってる。いったい誰に向ければいいのかわからない怒りが。
「どうもしない。だいたいこのレポートも含めて今回の件はすべて深水が勝手にやったことだ。ただ、責任は俺にある」
私の手もとからレポート資料を取り上げると、穂高壱弥は一瞬のためらいもなく用紙を切り裂いた。突然のことに目を丸くする私に、彼の切れ長の目がじっと注がれる。
「黙ってたらフェアじゃないからな」
そう言うと、彼はキッチンカウンターに置かれていたファイルを持ってきて私に差し出した。促されるままそれを開くと証明写真のように前を向いた人物の写真が挟まっている。それを見て「あっ」と声が漏れた。
「この人」
赤い唇がやたらと妖艶な、同じ歳か少し上くらいの彼女。脳裏をよぎるのは、自宅のベッドの上で重なる男女の姿だ。
「どうしてこの人の写真が」
「深水が金を払って雇った。佐々木純也に接触して、簡単な誘惑をしてほしいと」
「私にこれを見せて、どうしろと?」
昨日の社長面接のときには緊張して冷や汗をかいたのに、今は心が冷え切っているせいか彼と対峙しても焦りは一切湧かなかった。むしろ胸の奥に小さく怒りがくすぶってる。いったい誰に向ければいいのかわからない怒りが。
「どうもしない。だいたいこのレポートも含めて今回の件はすべて深水が勝手にやったことだ。ただ、責任は俺にある」
私の手もとからレポート資料を取り上げると、穂高壱弥は一瞬のためらいもなく用紙を切り裂いた。突然のことに目を丸くする私に、彼の切れ長の目がじっと注がれる。
「黙ってたらフェアじゃないからな」
そう言うと、彼はキッチンカウンターに置かれていたファイルを持ってきて私に差し出した。促されるままそれを開くと証明写真のように前を向いた人物の写真が挟まっている。それを見て「あっ」と声が漏れた。
「この人」
赤い唇がやたらと妖艶な、同じ歳か少し上くらいの彼女。脳裏をよぎるのは、自宅のベッドの上で重なる男女の姿だ。
「どうしてこの人の写真が」
「深水が金を払って雇った。佐々木純也に接触して、簡単な誘惑をしてほしいと」