孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 若くして立ち上げた会社を上場企業にまで成長させた才能あふれる彼は、UR賃貸住宅で母と四人の弟妹と家計を気にしながら育ってきた平々凡々な私とは、きっと生まれも育ちも全然違う。それなのに、私の考えや意見を聞いて対等に扱ってくれようとする。

 黒目の大きな切れ長の目を見返しながら、私はダメ元で口を開いた。

「それじゃあ、やっぱり働きに出てもいいですか? 一日中家にいると落ち着かなくて」

 これまで弟たちの世話やらアルバイトやら、社会人になってからは仕事やらいろどり亭の手伝いやら、休む暇もなく動き回っていたのだ。急に自分の時間ができると、胸にぽっかり穴が空いたみたいで心もとない。

「好きなことをすればいい」

 表情を変えずに、穂高壱弥は「ただし」と続ける。

「俺が帰宅するまでにはここに戻ってることが条件だ」

「はい。ありがとうございます。それともうひとつ」

「なんだ」

 斜向かいでタブレットに目を落とそうとする彼に、はっきり言う。

「あなたのことを知りたい」

 穂高社長は下げかけていた視線を戻した。真意を探るようなまっすぐな目を正面から受け止めて、私は思い切って続ける。

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