ねこねこ幼女の愛情ごはん〜異世界でもふもふ達に料理を作ります!〜5
妖精猫、トンネルを掘る
「やっぱり、あの山をどうにかしたいにゃんよねー」

 最近、口調がどんどん猫化していくエリナが、スカイヴェン国とフィフィール国を隔てる邪魔な山脈を思って口を尖らせた。

 マーレン国のお泊まり会から帰ってきてからのエリナは、早くまた三人で遊びたくてたまらない。日本にいた頃は幸運をすべて奪われてしまったために辛い思いをすることが多く、日々を生きていくことで精一杯だったので、友人と親しく付き合う……いや、友人を作ることすらできない孤独の中にいたのだ。

 それがこの国に来てからは、たくさんの優しい人々と出会った上にふたりの親友ができて、お泊まり会などという、自分には無縁だと思っていた素敵なイベントに参加することができて、共に木の上にある家のハンモックに寝たり、果物を採って食べたり、外でバーベキューをしたり、湖で泳いだりといった初めての楽しい体験をしてしまった。

「すごく楽しかったにゃ……」

 幼い身体に心が引っ張られてしまい、子ども時代から育ち直しをしているエリナの身体からは、楽しい思い出が溢れそうになっている。
 そして、スカイヴェン、マーレン、フィフィールの三国をもっと近くするにはどうしたらいいのかと、仕事の合間にそればかりを考えていた。

 今までは仕事のことしか考えずにいたエリナの変化は、真っ当な子ども時代をやり直すという点では歓迎すべきことである。
 何事にも余裕や遊びがないと上手く回らない。守護妖精たちが長い年月を過ごしてこられたのは、理解してくれる友人がいたからなのはもちろんだが、彼らが遊び心を持っていたからなのだ。

 けれど、真面目なエリナは、楽しみをもっと欲しいと考えてしまう自分に後ろめたさも持っていた。
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