フォーチュンクッキー
 目の前に差し出されたのは、サトからのハンカチ。

でもそんなので今のこのオレの汗が追いつくわけない。


「い、いいよ…」

「じゃあ、どうぞ」


 オレが断った隣で、出会ったときと同じように大きなタオルをばふっとかぶせられた。

 息苦しくてすぐ退けると、愛らしい笑顔が出迎える。


「イキナリだとビックリするでしょ、松永さん」

 呆れてオレが視界を遮った犯人に呟いた。


 悪びれるわけもなく、彼女は「すみませーん」って笑ってた。

そんな松永さんに厳しい目でサトは睨んでいた。


「そういうタオルは部員のために使ったら?マネージャーさん?」

「いえいえ~、平山先輩はバスケ部に貢献してくださった方ですから~」


 さすがの俺にだってわかるサトの嫌味たっぷりな言葉に、負けをとらない松永さん。

なんでここで女同士の戦いが始るんだかわからなかった。


 火花を散らす二人はおいといて、濡れたYシャツは肌にまとわりついてどうにも気持ち悪い。

裾をズボンから抜き取っていた。


 すると端っこにいたチビ助が、おもしろくなさそうにオレを見ていた。


「…どうした?」


 オレの問いにようやく視線が合う。

と思ったのに、あからさまに目をそらすチビ助。


「あ、あの…飲み物、買ってきます…」


 そういってオレのかばんを持ったまま、さっき教えてきた道を走っていってしまった。

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