フォーチュンクッキー
「要するに、中谷先輩があの『妹チャン』にあてつけたってことですよ」

「松永さんも加わってたでしょ~」


 そんな二人の会話は、今のオレには必要としていない。

自然と足は動き始めていた。


「た、太一っ!?」


 呼び止めるサトの声も振り切る。

 ただでさえ息切れして苦しいのに、暑さも加わって、オレの心臓が壊れそうだ。



 走ってはいけません、とイマドキかかれたポスターも無視して、チビ助がいるはずの購買部に走り出していた。



「うーん、お茶のほうがいいかなぁ?緑茶?ウーロン茶?」


 体のわりには大きな独り言をつぶやいて、3台並ぶ自動販売機の前をうろうろしている女の子。


 間違えるはずなんてない。



 はあ、はあ、と声を出しながら息を整えていたのが聞こえてしまったのか。

かばんを2つ持って振り返ってきた。


「あ、太一さんっ…」


 少し嬉しそう。

でも、少し困ってた。



 そういう顔されると、オレだって困るんだよ。

 思ってるより、オトナじゃないんだ。



 静かな校舎にドサっと響く。

セミの鳴き声とグランドから聞こえる威勢のいい声が、そこだけにあった。

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