フォーチュンクッキー
 ゆっくりとこげ茶の扉を開くと、芳ばしい香りとともに、まさしく素敵なベルの音が出迎えた。

そして、久しぶりにこのお店のお客さんを見た。


「こ、こんにちは〜」

「やあ、未来ちゃん」

 ひげを生やしたマスターの優しい笑みがあり、なんとなくほっとしてしまった。


 いつもの席の一つ空けた隣には、白髪をそろえて外の気温にはすこし寒そうなジャンパーを羽織ったおじさんが座っている。

耳にペンをかけて新聞とにらめっこしていたおじさんすらも、扉の開く音にこちらを向いてきた。


 そのおじさんには、あたしもなんとなく見覚えがあった。


「おお、いつかのお嬢ちゃんじゃないか。ほらほら、こっちこっち!」


 どうやら覚えてていてくれたみたいで、あたしはいそいそといつもの席に座る。

すこし回転させながら、足の長い椅子に腰掛けた。


 なぜかあの競馬のおじさんがニコニコと笑いながらみつめてきて、あたしは愛想笑いを返すくらいしかできないでいた。


 そんな困ったあたしを察してか、カウンターの奥から声が響く。


「おじさーん、絡まないでくれる?ああみえて、受験生だから」

 パーカーにエプロンをつけただけの太一さんだ。

腰に手を当てておじさんにジト目を送っていた。


 あたしは助かった、とばかりに胸を撫で下ろしていたら、おじさんはさらにニッと笑う。


「おやおや?太一くんやきもち?」


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