フォーチュンクッキー
「はぁか、冗談だよ」

「………っ!!」

 真に受けてしまったあたしは、すっごく悔しい。

唇を尖らせた後、 意地を張るように、あたしは教科書を乱暴に開いた。


「べ、勉強するんで!」


 でもカウンターの向こうで、さらにくすくすと笑っているのが聞こえた。

あたしは真っ赤になりながらも、むきになってペンを走らせた。


 恥ずかしさもぐるぐる渦巻いて、紛らわすように必死に文字を追う。

そうしていたら、いつの間にか集中できていた。


 年内までに終わらせておきたい参考書のページまで、残りわずか。


「……ふう」

 思わずため息をもらしながら、固まってしまった体をのばしたときだった。


 タイミングよく、ティーカップが差し出される。

その手に見上げると、あいかわらずやさしそうに微笑むマスター。


「未来ちゃん、悪いんだけどボクこれから出なきゃいけないんだ」

「……え?」


 辺りをキョロキョロ見回すと、あの競馬好きのおじさんもいつの間にかいない。

外も薄暗く、お腹もきゅぅと鳴きはじめた。


 そういえば食事を取るのも忘れていた。

うっすらと流れるBGMとコーヒーメーカーが奏でるコポコポとした音だけが店内に残っていた。


 どうやら相当、勉強に夢中になっていたようだ。

クスリと笑いを零したマスターは、店内の奥を指差す。

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