最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
第一章 最強の女騎士
1
金と青を基調にした絢爛たる扉が見えて来ると、ナーディア・ディ・モンテッラは安堵のため息が漏れるのを感じた。衛兵がおごそかに扉を開けると、一人の青年が、待ちかねたように中へと入って行く。ナーディアは、すかさず彼に続いた。同時に、声をかける。
「お疲れ様でございました」
青年は、あくびをかみ殺しながら頷いた。
「ああ。さすがにだりーわ」
いささか粗野な口調で答えるこの青年は、ここラクサンド王国の王太子・オルランドである。とはいえ、疲労困憊なのも無理はない。彼はこの十日間、父王の代理として、国内各地を飛び回っては視察に明け暮れていたのだ。ようやく今日、王都へ帰って来たのである。
「あと一週間は、何もしないで寝てたいって感じかな」
けだるそうに王宮内を歩きながら、オルランドがぼやく。まんざら冗談でもなさそうなその口調に、ナーディアは軽く眉をひそめた。
「そういうわけには参りませんよ。三日後には、宮廷舞踏会がございます」
今年十九歳になるオルランドには、すでにちらほら縁談が持ち上がりつつある。今回の舞踏会は、お相手探しも兼ねているのだ。だが、予想通りと言うべきか、オルランドは顔をしかめた。
「もうちょっと独身でいさせろっての」
この王子は、政務はそれなりに真面目にこなすのだが、女性に目が無いのが玉に瑕なのである。ナーディアは、本格的に目をつり上げた。
「オルランド様! 真剣に、お相手を選んでくださいませ。私、見張っていますからね!」
「お、ナーディアも出席するのか? じゃあ一曲お相手を……」
オルランドが、目を輝かせて振り返る。ナーディアは一蹴した。
「私が踊るわけないでしょう」
ナーディアは、モンテッラというれっきとした侯爵家の令嬢で、年齢はオルランドと同じ十九歳である。にもかかわらず、宮廷舞踏会に出席しながら、踊らない理由。それは彼女が、女性で唯一の王宮近衛騎士団員で、なおかつオルランドの専属護衛だからである……。
「お疲れ様でございました」
青年は、あくびをかみ殺しながら頷いた。
「ああ。さすがにだりーわ」
いささか粗野な口調で答えるこの青年は、ここラクサンド王国の王太子・オルランドである。とはいえ、疲労困憊なのも無理はない。彼はこの十日間、父王の代理として、国内各地を飛び回っては視察に明け暮れていたのだ。ようやく今日、王都へ帰って来たのである。
「あと一週間は、何もしないで寝てたいって感じかな」
けだるそうに王宮内を歩きながら、オルランドがぼやく。まんざら冗談でもなさそうなその口調に、ナーディアは軽く眉をひそめた。
「そういうわけには参りませんよ。三日後には、宮廷舞踏会がございます」
今年十九歳になるオルランドには、すでにちらほら縁談が持ち上がりつつある。今回の舞踏会は、お相手探しも兼ねているのだ。だが、予想通りと言うべきか、オルランドは顔をしかめた。
「もうちょっと独身でいさせろっての」
この王子は、政務はそれなりに真面目にこなすのだが、女性に目が無いのが玉に瑕なのである。ナーディアは、本格的に目をつり上げた。
「オルランド様! 真剣に、お相手を選んでくださいませ。私、見張っていますからね!」
「お、ナーディアも出席するのか? じゃあ一曲お相手を……」
オルランドが、目を輝かせて振り返る。ナーディアは一蹴した。
「私が踊るわけないでしょう」
ナーディアは、モンテッラというれっきとした侯爵家の令嬢で、年齢はオルランドと同じ十九歳である。にもかかわらず、宮廷舞踏会に出席しながら、踊らない理由。それは彼女が、女性で唯一の王宮近衛騎士団員で、なおかつオルランドの専属護衛だからである……。
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