最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
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「じゃあつまり、ドレスも着ないってことか? ……もしや、その制服で?」
オルランドが、ナーディアの体を無遠慮に眺め回す。一年前、オルランドの護衛に抜擢された時は、彼のこういう言動が我慢ならず、セクハラだとわめきちらしたものだが。オルランドとはこういう人間なのだと達観した今では、虫が飛び回っているくらいにしか気にならない。王太子というから錯覚するだけで、要は単なるチャラ男なのだ、というのがナーディアの出した結論だった。
「さようでございます」
「つまんねえの」
「私は、この制服が気に入っておりますから。これでいいんです」
本音である。金と青という、ラクサンド王国のナショナルカラーを基調にしたこの制服は、栄えある王立騎士団員の中でも、ごく一部の精鋭しか着られないものである。選び抜かれたその少数メンバーは、王宮近衛騎士団として、王族の警護を担当させていただくのだ。初めて袖を通した時は、どれほど嬉しかったことか。
「ふうん。……あ、そういえば」
落胆の表情を見せたのは束の間で、オルランドは何かを思いついた顔をした。
「『ラクサンドのネモフィラ』は出席するのか?」
「そのように申しておりました」
そう答えたとたん、オルランドの顔はパッと輝いた。
『ラクサンドのネモフィラ』とは、ナーディアの姉・フローラの通称である。フローラは、ナーディアより一つ年上の二十歳だが、その美貌は国一番と称えられている。鮮やかな黒髪、抜けるような白い肌と、フローラの美点を数え上げればキリがないが、一番は澄んだブルーの瞳であろう。ラクサンド王国の国花であるネモフィラを彷彿とさせるとして、いつしか彼女はその名で呼ばれるようになったのだ。
「では、ぐうたらしている場合ではないな! フローラ嬢は、さぞ競争率が高いだろうから……」
さっきまでのかったるそうな態度はどこへやら、オルランドは一転浮かれ始めた。ナーディアは、小さくため息をついた。
(期待なさっても、無理でしょうけど)
フローラは夢見がちな性格で、男性には、物語に出て来るような完璧な貴公子ぶりを求めているのである。立場が王子というだけで、中身はチャラ男であるこの主に望みがあるとは、とうてい思えなかった。
オルランドが、ナーディアの体を無遠慮に眺め回す。一年前、オルランドの護衛に抜擢された時は、彼のこういう言動が我慢ならず、セクハラだとわめきちらしたものだが。オルランドとはこういう人間なのだと達観した今では、虫が飛び回っているくらいにしか気にならない。王太子というから錯覚するだけで、要は単なるチャラ男なのだ、というのがナーディアの出した結論だった。
「さようでございます」
「つまんねえの」
「私は、この制服が気に入っておりますから。これでいいんです」
本音である。金と青という、ラクサンド王国のナショナルカラーを基調にしたこの制服は、栄えある王立騎士団員の中でも、ごく一部の精鋭しか着られないものである。選び抜かれたその少数メンバーは、王宮近衛騎士団として、王族の警護を担当させていただくのだ。初めて袖を通した時は、どれほど嬉しかったことか。
「ふうん。……あ、そういえば」
落胆の表情を見せたのは束の間で、オルランドは何かを思いついた顔をした。
「『ラクサンドのネモフィラ』は出席するのか?」
「そのように申しておりました」
そう答えたとたん、オルランドの顔はパッと輝いた。
『ラクサンドのネモフィラ』とは、ナーディアの姉・フローラの通称である。フローラは、ナーディアより一つ年上の二十歳だが、その美貌は国一番と称えられている。鮮やかな黒髪、抜けるような白い肌と、フローラの美点を数え上げればキリがないが、一番は澄んだブルーの瞳であろう。ラクサンド王国の国花であるネモフィラを彷彿とさせるとして、いつしか彼女はその名で呼ばれるようになったのだ。
「では、ぐうたらしている場合ではないな! フローラ嬢は、さぞ競争率が高いだろうから……」
さっきまでのかったるそうな態度はどこへやら、オルランドは一転浮かれ始めた。ナーディアは、小さくため息をついた。
(期待なさっても、無理でしょうけど)
フローラは夢見がちな性格で、男性には、物語に出て来るような完璧な貴公子ぶりを求めているのである。立場が王子というだけで、中身はチャラ男であるこの主に望みがあるとは、とうてい思えなかった。