最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
4
「ダリオ……。冗談でしょう?」
騎士でもない彼がなぜ珍しく帯剣しているのか、という疑問もかすめたが、ナーディアにはまず、目の前の出来事が信じられなかった。コルラードは、横でぽかんと口を開けている。
「あいにく、本気だ」
ダリオは、淡々と答えた。
「……ああ、丸腰の相手を斬るのは、騎士道精神に反するか。それなら、別に剣を用意させてもいい」
「は……。それこそ、冗談でしょ。ダリオが、剣で私に勝った例ためしはないじゃない」
ナーディアは思わず苦笑したのだが、ダリオの眼差しは相変わらず真剣だった。
「それでも、今は君に勝負を申し込みたい。それくらい、君を行かせたくない!」
ダリオがここまで言い張るからには、何かあるのだろう。それでもナーディアに、譲る気はなかった。
「……ごめん、ダリオ。それから、今までありがとう」
言うなりナーディアは、ダリオのみぞおちに膝蹴りを食らわせた。彼がよろめいた隙に、部屋を飛び出す。真っ直ぐ、玄関へと走った。向かう先は、騎士団の寮だ。
拾った辻馬車で寮へ到着する頃には、大分夜も更けていた。勤務を終えたらしき同僚らの姿が、チラホラ見える。だがそこで、ナーディアは違和感を覚えた。皆、ナーディアを見ると、サッと避けるのだ。ヒソヒソ囁きながら、遠目でこちらを見ている。その雰囲気には、覚えがあった。この男社会では頻繁にありがちな、卑猥な話題で盛り上がる際の独特の表情を、彼らは浮かべていたのだ。
不審には思ったが、今はそれどころではない。急いで自室に駆け付けたナーディアだったが、そこで息を呑んだ。部屋の扉に、大きな字で落書きがしてあったのだ。
『人殺し』
『あばずれ女』
騎士でもない彼がなぜ珍しく帯剣しているのか、という疑問もかすめたが、ナーディアにはまず、目の前の出来事が信じられなかった。コルラードは、横でぽかんと口を開けている。
「あいにく、本気だ」
ダリオは、淡々と答えた。
「……ああ、丸腰の相手を斬るのは、騎士道精神に反するか。それなら、別に剣を用意させてもいい」
「は……。それこそ、冗談でしょ。ダリオが、剣で私に勝った例ためしはないじゃない」
ナーディアは思わず苦笑したのだが、ダリオの眼差しは相変わらず真剣だった。
「それでも、今は君に勝負を申し込みたい。それくらい、君を行かせたくない!」
ダリオがここまで言い張るからには、何かあるのだろう。それでもナーディアに、譲る気はなかった。
「……ごめん、ダリオ。それから、今までありがとう」
言うなりナーディアは、ダリオのみぞおちに膝蹴りを食らわせた。彼がよろめいた隙に、部屋を飛び出す。真っ直ぐ、玄関へと走った。向かう先は、騎士団の寮だ。
拾った辻馬車で寮へ到着する頃には、大分夜も更けていた。勤務を終えたらしき同僚らの姿が、チラホラ見える。だがそこで、ナーディアは違和感を覚えた。皆、ナーディアを見ると、サッと避けるのだ。ヒソヒソ囁きながら、遠目でこちらを見ている。その雰囲気には、覚えがあった。この男社会では頻繁にありがちな、卑猥な話題で盛り上がる際の独特の表情を、彼らは浮かべていたのだ。
不審には思ったが、今はそれどころではない。急いで自室に駆け付けたナーディアだったが、そこで息を呑んだ。部屋の扉に、大きな字で落書きがしてあったのだ。
『人殺し』
『あばずれ女』