最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
11
「ロレンツォ、お前……」
ナーディアは、複雑な思いに駆られた。計画が失敗したということは、ロベルトを手にかけるつもりだろうか。そう聞きたかったが、口にするのが恐ろしかった。するとロレンツォは、不意に体を離すと、ナーディアの目を見て告げた。
「安心しろ。俺はもう、お前の父親を殺さないと決めた」
「――本当か?」
にわかには信じがたかった。コドレラでのあの夜、あれほどロベルトへの憎しみを訴えていたではないか……。するとロレンツォは、意外なことを言い出した。
「一週間、お前を放置した理由は、他にもある。実は、復讐よりも大切なことが発生したんだ。今日まで俺は、それにかかりきりだった」
さっぱり見当がつかず、ナーディアはきょとんとした。真剣な眼差しで、ロレンツォが続ける。
「それが成功すれば、父上の名誉は回復される。俺はもう、自分の正体を偽らなくても済むようになるんだ。堂々と、ジャンニ・ディ・バローネとして生きていけるようになる……。だから、ロベルト・ディ・モンテッラへの憎しみが消えたわけではないが、復讐は取り止めるつもりだ。これは、神に誓う」
「ええと……、具体的に、何をするんだ?」
ロレンツォは、申し訳なさそうにかぶりを振った。
「悪い。これ以上は、言えないんだ……。でもナーディア、一つお前に聞きたい。俺が、ジャンニ・ディ・バローネとして正々堂々と生きていけるようになれば……、お前に求婚してもいいか?」
ナーディアは、目を見張った。
(いや、無理だろう)
いくらフローラとの婚約を解消し、ロベルト殺害計画を取り止めたとしても、問題は山積みだ。王妃との約束もさることながら、父ロベルトが許すはずないではないか。
「外野の思惑は考えるな。お前の気持ちが知りたい」
ロレンツォのエメラルドグリーンの瞳は、ナーディアの不安をお見通しのようだった。
「ナーディア。答えてくれ」
ナーディアは、視線を逸らして呟いた。
「答は、わかってるだろう。もう他の男とは結婚できない体なんだ。それを見越していたくせに」
いくらダリオが気にしないと言ってくれても、汚れた体で嫁ぐなど、ナーディアにはできなかった。それに……、何よりも。ロレンツォを愛しているのだ。他の男など、考えられなかった。
ナーディアは、複雑な思いに駆られた。計画が失敗したということは、ロベルトを手にかけるつもりだろうか。そう聞きたかったが、口にするのが恐ろしかった。するとロレンツォは、不意に体を離すと、ナーディアの目を見て告げた。
「安心しろ。俺はもう、お前の父親を殺さないと決めた」
「――本当か?」
にわかには信じがたかった。コドレラでのあの夜、あれほどロベルトへの憎しみを訴えていたではないか……。するとロレンツォは、意外なことを言い出した。
「一週間、お前を放置した理由は、他にもある。実は、復讐よりも大切なことが発生したんだ。今日まで俺は、それにかかりきりだった」
さっぱり見当がつかず、ナーディアはきょとんとした。真剣な眼差しで、ロレンツォが続ける。
「それが成功すれば、父上の名誉は回復される。俺はもう、自分の正体を偽らなくても済むようになるんだ。堂々と、ジャンニ・ディ・バローネとして生きていけるようになる……。だから、ロベルト・ディ・モンテッラへの憎しみが消えたわけではないが、復讐は取り止めるつもりだ。これは、神に誓う」
「ええと……、具体的に、何をするんだ?」
ロレンツォは、申し訳なさそうにかぶりを振った。
「悪い。これ以上は、言えないんだ……。でもナーディア、一つお前に聞きたい。俺が、ジャンニ・ディ・バローネとして正々堂々と生きていけるようになれば……、お前に求婚してもいいか?」
ナーディアは、目を見張った。
(いや、無理だろう)
いくらフローラとの婚約を解消し、ロベルト殺害計画を取り止めたとしても、問題は山積みだ。王妃との約束もさることながら、父ロベルトが許すはずないではないか。
「外野の思惑は考えるな。お前の気持ちが知りたい」
ロレンツォのエメラルドグリーンの瞳は、ナーディアの不安をお見通しのようだった。
「ナーディア。答えてくれ」
ナーディアは、視線を逸らして呟いた。
「答は、わかってるだろう。もう他の男とは結婚できない体なんだ。それを見越していたくせに」
いくらダリオが気にしないと言ってくれても、汚れた体で嫁ぐなど、ナーディアにはできなかった。それに……、何よりも。ロレンツォを愛しているのだ。他の男など、考えられなかった。