最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

7

「ザウリ団長!!」





 王立騎士団員らは、さすがに動揺したようだった。しかしそこで、一人が口走った。





「ザウリ団長は、モンテッラ様に斬りかかろうとされたぞ! 俺は、この目で見た!」



「何だと!?」





 王立騎士団は、一気に混乱の渦に巻き込まれていった。ロベルトが静めようとするも、皆うろたえきっている。明らかに、内紛を起こしていた。





「ロレンツォ……。お父様を助けたのか?」





 ナーディアは、ロレンツォに尋ねた。彼は、無表情で答えた。





「ザウリは、敵方の司令官だ。だから奴を狙った。それだけだ」





 本当だろうか。いずれにしても、ダリオから聞いた話は伝えねばならない。





「ロレンツォ、あのな……」





 ナーディアが話し出そうとした、その時だった。大きな声が上がった。





「シリステラ軍が来たぞ!」





 遙か遠方から、数百の軍勢が押し寄せて来る。その先頭に立っていたのは、何と女性だった。ナーディア同様、凜々しく武装している。





「シリステラが来ただと!?」



「あれは、エレオノーラ王女じゃないか!」





 国王側が、蜂の巣をつついたように騒ぎ始める。ナーディアも仰天した。エレオノーラ王女というのは、現シリステラ国王の長女だ。今年十八歳だが、男勝りで武芸に秀で、自ら軍を率いて戦いに挑むこともあるという。





 王女は、みるみるうちに近付いて来ると、オルランドに向かって怒鳴った。





「加勢に参ったぞ。まだ勝負が付いておらんのか、この腰抜けが!」





(加勢……!?)





 するとロレンツォは、ナーディアの耳元で囁いた。





「オルランド殿下は、国王になられたら、シリステラと同盟を結ばれるおつもりだ」





 何と、とナーディアは目を見張った。オルランドが一声を放つ。





「援軍登場だ。シリステラ軍は、我々の味方だ!」





 そして彼は、ナーディアに向かって微笑んだ。





「俺は、必ず勝つぞ。何せ、勝利の女神が二人付いているからな」
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