最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

8

「ほら、試合、もうすぐだぞ。このままでいけば、お前と決勝で当たれるな」



「当然」





 ナーディアは、胸を張った。新しい王立騎士団のメンバーも、強豪ぞろいだが、ナーディアとジャンニに並ぶ者はいない。決勝では、二人が戦うことになるだろうと、誰もが予想しているようだ。





「やっと、お前と手合わせできるな! 十四年越しの願いが叶った!」





 ぴょんぴょん飛び跳ねれば、ジャンニは呆れた顔をした。





「十四年ぶりじゃないだろう。俺が入団した際、手合わせしたろうが」





「でもあの時、お前は手加減してたろ! おまけに、中途半端に負けを認めやがるし……。だからあれは、本当の手合わせとは言えない。お前が本気を出したら、私はメタメタにやられるかもな」





 半分冗談で言ったのだが、ジャンニは大きくかぶりを振った。





「いや。まあ確かに、途中まで手加減していたのは認める。でもお前は、本当に強かったよ。あのまま続けたところで、勝敗はどうなっていたかわからん……。だから今日の勝負も、どうなるかわからんぞ」





 そう語るジャンニの眼差しは、驚くほど真剣で、ナーディアは思わず頷くしかなかったのだった。







 そしてついに、決勝戦が訪れた。観衆の多くが予想していた通り、王立騎士団長・ジャンニ・ディ・バローネと、副団長兼彼の妻である、ナーディアの対決だ。





(ようやく、念願のジャンニとの手合わせが……)





 ナーディアは、国王夫妻の方を見やった。オルランドと目が合う。ナーディアは、直感した。彼は、ナーディアの昔話を覚えていて、この試合をセッティングしたのだと。





(全力で戦おう。私を支えてくれる、全ての人のために)





 ナーディアは、誓った。ジャンニと、対面する。そのエメラルドグリーンの瞳と目が合った瞬間、試合開始が告げられた。





 ナーディアは、大きく踏み込んで行った。長い間待ち望んできた手合わせが、今始まろうとしていた。







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