最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
第四章 実家にて

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 その休日、ナーディアは、寮の自室でフローラからの手紙を読んでいた。





 あの舞踏会でフローラは、ロレンツォにすっかり惚れ込んでしまったのだという。整った容姿にダンスの上手さ、紳士的な振る舞いと、彼はフローラの理想そのものだった。だが決定打はやはり、パヴァン騒動を華麗に終結させたことだった。





『お父様は、最初この縁談に、難色を示しておられたのだけれど。でもロレンツォ様のお人柄を知って、最終的には賛成してくださいましたわ。何より、私がどうしても彼でないと、と強情を張りましたの』





 文面からは、フローラの高揚が伝わってくるようだった。父ロベルトが反対したことを、ナーディアはやや不思議に思った。ロベルトと、ロレンツォの父マクシミリアーノ・ディ・フェリーニは、若い頃かなり親しかったのだ。フェリーニ家の長男ダリオと、ナーディアらモンテッラ家の子供たちは、幼い頃よく一緒に遊んだくらいなのに。





(やはり、ロレンツォが庶子ということを気になさったのだろうか……?)





 フローラは、手紙をこう締めくくっていた。





『ナーディアも忙しいでしょうけれど、一度実家へ来てくれないかしら? お嫁入りの支度をしているのだけれど、いろいろと不安で。相談に乗って欲しいわ』





 ナーディアは、ピンときた。女性の助けが欲しいのだろう。本来なら嫁入り支度といえば、母親が仕切るものだが、母はもういない。父ロベルトでは、気が回らないところもあるだろう。もちろん、コルラードは論外だ。





(私で役に立つかはわからないけれど、少しでも姉様が安心するなら、手伝いに伺おう……)





 ナーディアは、返事をしたため始めたのだった。
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