最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
3
ナーディアが部屋に入ると、ロレンツォはせかせかと尋ねてきた。
「で、結婚を認める気になった理由は?」
「宮廷舞踏会がきっかけだよ。下手をしたら外交問題になりかねないあの事態を、お前は実に上手く収拾した。感服したし、あれなら姉を任せても大丈夫な気がしたんだ」
「なるほどね」
ナーディアに椅子を勧めながら、ロレンツォが頷く。
「俺は、今のラクサンドとイリヴェンの関係に疑問を持っている。イリヴェンは、ラクサンドに見下されているという意識が強いんだ。パヴァン殿の振る舞いは確かにひどいが、あそこまでの騒ぎになったのは、イリヴェン国民のコンプレックスが背景にあるからだ。それには、ラクサンドの責任も大きい」
ロレンツォのエメラルドグリーンの瞳には、真剣な光が宿っていた。
「ラクサンドはイリヴェンを、独立国としてもっと尊重しなくちゃいかん。俺が言った通り、大事な石炭の輸入元でもあるんだぞ? 何かというと援軍を派遣するのも、よろしくないと思う」
「でも、それはイリヴェン側が要請するからだろう? 断れば、関係は悪化するじゃないか」
ナーディアは反論したが、ロレンツォはかぶりを振った。
「それではいつまで経っても、両国の関係は変わらない。毎度援軍を送って対症療法するのではなく、抜本的な解決を図るべきだ……。つまり、シリステラをどうにかすべき、という意味だ」
ああ、とナーディアは合点した。シリステラは、ラクサンドの敵国だ。イリヴェンには石炭目当てで、何かに付け戦を仕掛けている。
「ロレンツォは、国思いなんだな」
ナーディアは、感心してロレンツォの顔を見つめた。
「これくらい、普通だろう」
「いや、真剣に考えているのはわかるよ。ずいぶん、勉強もしているようだし」
書棚に並んだ本は、歴史や外交に関するものばかりだった。
「何だか、私たち王都の人間より、よほど王国のことを考えているんだな。……その、悪かったよ。辺境出身と、馬鹿にしたりして」
あっさりと謝罪すれば、ロレンツォは戸惑ったようだった。
「……何だよ?」
「いや。素直なんだな、と思って」
「悪いと思ったことは潔く謝れと、小さい頃からたたき込まれてきたからな。父の教えだ」
ナーディアは、ふふっと笑った。
「で、結婚を認める気になった理由は?」
「宮廷舞踏会がきっかけだよ。下手をしたら外交問題になりかねないあの事態を、お前は実に上手く収拾した。感服したし、あれなら姉を任せても大丈夫な気がしたんだ」
「なるほどね」
ナーディアに椅子を勧めながら、ロレンツォが頷く。
「俺は、今のラクサンドとイリヴェンの関係に疑問を持っている。イリヴェンは、ラクサンドに見下されているという意識が強いんだ。パヴァン殿の振る舞いは確かにひどいが、あそこまでの騒ぎになったのは、イリヴェン国民のコンプレックスが背景にあるからだ。それには、ラクサンドの責任も大きい」
ロレンツォのエメラルドグリーンの瞳には、真剣な光が宿っていた。
「ラクサンドはイリヴェンを、独立国としてもっと尊重しなくちゃいかん。俺が言った通り、大事な石炭の輸入元でもあるんだぞ? 何かというと援軍を派遣するのも、よろしくないと思う」
「でも、それはイリヴェン側が要請するからだろう? 断れば、関係は悪化するじゃないか」
ナーディアは反論したが、ロレンツォはかぶりを振った。
「それではいつまで経っても、両国の関係は変わらない。毎度援軍を送って対症療法するのではなく、抜本的な解決を図るべきだ……。つまり、シリステラをどうにかすべき、という意味だ」
ああ、とナーディアは合点した。シリステラは、ラクサンドの敵国だ。イリヴェンには石炭目当てで、何かに付け戦を仕掛けている。
「ロレンツォは、国思いなんだな」
ナーディアは、感心してロレンツォの顔を見つめた。
「これくらい、普通だろう」
「いや、真剣に考えているのはわかるよ。ずいぶん、勉強もしているようだし」
書棚に並んだ本は、歴史や外交に関するものばかりだった。
「何だか、私たち王都の人間より、よほど王国のことを考えているんだな。……その、悪かったよ。辺境出身と、馬鹿にしたりして」
あっさりと謝罪すれば、ロレンツォは戸惑ったようだった。
「……何だよ?」
「いや。素直なんだな、と思って」
「悪いと思ったことは潔く謝れと、小さい頃からたたき込まれてきたからな。父の教えだ」
ナーディアは、ふふっと笑った。