最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

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「他にも。初対面の時、結構嫌な態度を取ったろ? ごめんな」



「いや、俺こそ生意気なことを言った。お互い様だ」





 ナーディアにつられたのか、ロレンツォも微笑む。





「それに、正規の入団課程を経ていないのは事実だ。皆が憤るのも、無理はないと思っている」



「でも、お前は強いと思うぞ!」





 ナーディアは、身を乗り出した。





「マリーノたちを負かしたこともだが、実際私自身、お前と対戦してわかった。是非また、手合わせしてくれないか? ……ほら、あの時は団長に、途中で止められてしまったし」





 だがロレンツォは、なぜか微妙な表情になった。





「いや……。あれは俺の負けだよ。別に、やり直す必要はない」



「やり直すという意味じゃなくて! 純粋に、お前と戦いたいんだよ」





 ナーディアは意気込んだが、彼はそれでも気乗りしない様子だった。





「まあ、そのうちにな……。ところで」





 ロレンツォは、ナーディアをじっと見返した。





「お前とフローラ嬢、コルラード殿は、皆髪と目の色が同じなんだな」



「ああ。父譲りなんだ」





 唐突な話題に戸惑いながら、ナーディアは答えた。





「ロベルト様似、か……。失礼だが、父方の家系で、お前と同い年くらいの男性はいないか? お前のような、黒髪とブルーの瞳をした」



「同じくらいの男性?」





 ナーディアは、親戚たちの顔を思い浮かべた。父方のいとこは女性ばかりだし、男性の親族は全員年齢が離れている。心当たりはなかった。





「いや、いないと思うが」



「――いない、のか」





 ロレンツォのエメラルドグリーンの瞳は、その時激しく揺れたように見えた。
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