最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

6

「ロレンツォ、これ……」





 ロレンツォが開けた小箱の中身を見て、ナーディアは息を呑んだ。そこには、燦然と輝くサファイアのネックレスが収められていたのだ。





「よかったら、着けてくれ。お前の瞳の色にそっくりだ。きっと、似合うだろうと思って選んだ」





 ナーディアは、ハッとした。あの閉じ込め事件の翌日、ロレンツォは宝石商と会うと言っていた。てっきり、フローラへのプレゼントを買うのだろうと思っていたが……。





「私に……? でも、こんな高価そうなもの、申し訳ない」



「気にするな。ベルトのお返しだ」





 どう考えても、このネックレスとベルトでは、価値が違いすぎるのだけれど。逡巡していると、ロレンツォは苦笑いした。





「では、こういう理由ならどうだ? あの夜、ブランデーの飲み比べ勝負をしたろ? お前は先に潰れたんだから、負けだ。勝者からの要求として、これを受け取ってくれ」





「勝った方がプレゼントするとか、変だろ……」





 とは言いつつも、気持ちは嬉しい。うやうやしく小箱を受け取ると、ロレンツォはほっとしたような顔をした。





「ありがとう、助かったよ。今夜は、これを着ける」





 ナーディアは、ロレンツォに向かって微笑んでいた。彼から贈られたこのネックレスを着けると考えると、負担だったドレス姿が、少しだけ楽しみになってきたのだった。
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