真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

第五話 アリバイ


加瀬さんはセミロングの髪の毛を、耳にかけた。

黒いツヤツヤした、美しい髪だと思った。



「あの、それって、私のアリバイってことだよね?」



加瀬さんは確かめるように、ゆっくりと言う。



「警察の人にも言ったけど、私、あの日は時田さんに朝早く呼び出されていたの。前日くらいだったかな、北校舎で待ってるから来てって言われて」

「北校舎……」



私は思わず息吹ちゃんを見てしまう。

息吹ちゃんは加瀬さんをまっすぐに見つめていた。



「北校舎に多目的室ってあるでしょう?あそこで待ってるから来てって」

「それで、行ったんですか?多目的室に」



息吹ちゃんの質問に、加瀬さんは首を振る。



「学校には来た。だけど、怖気(おじけ)づいて……。また何か嫌なことされたり言われたりするのかなって思うと、どうしても北校舎に足が向かなかった」

「じゃあ、時田さんが倒れているって、発見された時は……?」

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