婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜

「自分の力だけで生きようとすることは、立派な心がけだと思う。でも、生きていく限りどうしても一人ではできないことが起こるんだ。そんな時は人に助けてもらって、逆に人が困っている時は手を差し伸べる……これが、大人として自立をしているということなんじゃないか?」

「そう……かもしれない」

 彼の正論に、返す言葉もなかった。

「だからマギーも困っている時は俺に頼っていいんだよ。その代わり、領民が困っている時は助けてやってくれ」

「分かったわ……」

 わたしは改めて彼から斧を受け取った。初めて持つそれはずしりと重くて、でも反比例してわたしの心は不思議と軽やかだった。

 小屋が完成して、ここに住むようになったら、余った野菜やお肉は領民たちへ配ろう。領地視察で見た孤児院へ持って行こうかしら。
 辺境は魔物討伐の最前線で、残念なことに亡くなる兵士も多い。孤児院は、その残された子供たちの居場所だ。

 幸いにもわたしは貴族として教育を受けて来たので、それを彼らに教えることができるんじゃないかしら。
 子供たちが大人になって困らないように、手助けができるかもしれない。

 ……きっと、わたしにも出来ることがあるはず。



 こうして、わたしの小屋作りが始まったのだ。

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