婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜


 わたしは仕方なく彼の隣に座って、自分用の斧を研ぎ始めた。昨日はスペクタクルカメレオンのせいで急遽帰宅をしたので、その分も頑張らなきゃいけないわ。

 しばらくの間、刃物が砥石に擦れる音だけが規則正しく響く。

「なぁ」

 少しして、突如、辺境伯が声を発した。

「なんですの?」

「君はなんで自立したいんだ?」

「えぇっ……」

 思わず作業する手を止めて、目をぱちくりして彼を見た。

「気になるじゃん」

「……大したことではないわ」

「いや、夫として妻のことは気になるだろ」

「別に。それに、まだ正式な夫婦じゃないわ」

「マギーちゃ~ん。話してくれよー!」

「っ……。取るに足らないことよ」

「じゃあ、なんでそんなに寂しそうな顔をしているんだよ」

「……!」
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