婚約破棄された社交苦手令嬢は陽キャ辺境伯様に愛される〜鏡の中の公爵令嬢〜


「とりあえず俺があれの動きを止める。ブレイクは隊列を組んで敵の急所を集中して攻めてくれ」

「御意」

 デニスは一歩前へ出る。そして呪文を唱えだした。
 ドラゴンはその間も破壊を尽くし、周辺の木々をなぎ倒していく。

 彼の肉体がカッと光る。
 刹那、ドラゴンの背後の湖が持ち上がった――と思ったら、水が飴の塊のようにぐんと伸びて、獲物の首に巻き付いた。

 動きを止めるドラゴン。デニスは掲げた両手に魔力を込めて、後ろへ引っ張る。まるで綱引きでもやっているかのようだった。

 水の輪は、じわじわと太い首を締め付ける。血の気が引いたドラゴンは、尾を振って必死で抵抗する。その度に、大地が激しく揺れて土煙が立った。

 やがて、

 ――ズドンッ!

 腹の底から突き上げるような鈍い音を立てて、ドラゴンの背中が地に付いた。

「攻撃開始!」

 ブレイクの合図で一斉攻撃。ドラゴンの各急所へそれぞれ攻撃を加える。
 しかし……、

「駄目です! 皮膚が固すぎて攻撃が通りません!」

「ならば一箇所だけだ! 全員で心臓を狙えっ!」

 一点突破の全力の攻撃が始まる。
 はじめは見えない鎧を着ているかのように硬かった皮膚が、少しずつ削れていった。

「天然のより強いな……」デニスは独り言つ。「最近、魔の瘴気の磁場が乱れていたからか……? 一体、なぜ……――っつっ!?」

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