夜這いを命じられたら、国王陛下に愛されました

新王セウリス・ガキア 6

11.



「エイベル、気にするな。こいつらは俺を揶揄うのが好きなだけだ」
「‥‥そのようで」

 素直に頷いたエイベルにオリヴェロは「酷くない?」と口を尖らせる

「事実だ‥――」
「‥‥‥」

 ピタリと突然足を止めたセウリス。オリヴェロも弾かれたように鋭く視線を寝室の方へ向ける。エイベルは気付いていない

「―――おじょ‥‥‥――おき――!」

「(話声がするな)」
「(トラブルでもあったんじゃない)」
「(なんにせよ、気付かぬぐらいは焦っているようだな)」

 小声で会話をし、オリヴェロとセウリスは密かにうんと頷く

「――では、用があったら呼ぶ」
「はい。おやすみなさいませ」
「夜食は部屋の前に置くよう手配しておきます」
「ああ」

 続の間(つづきのま)の前でわざとらしく会話をし、ここで一旦離れる
 この行動には二つの意味があり、一つは刺客がいた場合に油断させ、逃がさないようにするための措置であり、もう一つはセウリスが“気に入った場合”の時用の意味がある。記念すべき最初の侵入者の時はなにより頭が痛くて、そんなことを考える暇がなく、今思えばちらほら「あぁ、イイ女だったな」と惜しむ…訳もなく、普通に自室に知らない女が居たら恐怖だ。普通に怖いし、犯罪だし、頭痛がして仕方ないのでその場で頭を切り落とし、合図を出し騎士たちが突入からの――逃げようとした刺客――確保をかますので既に一つの意味しかないのは周知の事実であろうが、毎度毎度飽きずにそういうことを言うのはやめてくれと己の腹心であるはずの側近に声を大にしていいたい。流石にそういうことを大声では言えないので無視するようにしている。効果は無い

「(‥‥気配が消えたな。逃げたのか?‥‥‥いや、限りなく小さく、気配を消している)」

 話し声に気付き、ここが引き際だと寝室の取っ手に手をかけた瞬間消えた気配
 寝台から小さな息遣いが聞こえるのはまるきり無視をして、油断なく周囲を見回す

「はぁ」

 ため息を一つ
 上衣をてきとうにそこらのカウチに引っ掛け、寝台に近寄る。まぁ、見てやらんことも無いかという諦めと無関心が極まった心中である
 躊躇いが少しも見られない己の寝台にあるふくらみ。さて、どんな格好をして待ち構えていることやらと冷めた瞳で躊躇なく引っ張る(捲りあげる)

「‥‥‥すぅ‥‥すぅ」
「――!‥‥‥‥‥はあ!?」

 だが、予想と反して、寝台で待ち構えていた侵入者とやらはあられもない姿で爆睡をかましていた

「はぁ‥‥?」

 再度、意味が解らないと首を傾げ、いつのまにかぎゅっと強い力で引き戻されたシーツと女にやっと真剣に視る。寝ている。寝たふりでもなんでもなく完全に寝ている。爆睡だ。しかもこのシーツを引き戻そうとする無意識化の力の強さ。意地でも布団を話さない子供のような仕草だ。‥‥もしや、寒いのだろうか。あぁ、すると先ほどの話声はさすがにまずいと気づいた刺客が起こそうとしていたのか
 意味が解らなすぎる故、頭は限界まで冷え、冷静に、否冷静過ぎるほどに回っている

「‥‥‥」

 セウリスは何とも言えない表情ですぅすぅと寝息を立てる少女を見下ろす
 これは侵入者なのだろうか、それとも命令されて連れてこられただけの只々マイペース?が過ぎる無害な令嬢なのだろうかと前例がない不思議な侵入者に思考が囚われる
 今度はそっと、起きない様にシーツをめくった。薄い紗の夜着が明らかになった
 ふるり
 瞼が震えた。起きるのかと身構えたが、杞憂だった。再度、マジマジと見つめて、うん?とセウリスは首を傾げる

「淡い‥‥‥」

 女は淡かった
 シーツの所為でよくわからなかったが、なんとか頭が事実を受け入れようと眼球からの情報を受け入れ始めた今、浮き出た様に女の色形が分かった
 女は金と銀が混ぜ合わさったようなブロンドの髪をしていた。肌が酷く白かった。なまじ、周囲が暗く、布で隠されていたが故、そこだけがぽっかり逆に穴が開いたように白かった。瞳はどうなのだろう。瞳も淡い金銀色なのだろうか
 無意識に知りたいという欲求がセウリスに宿る
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