夜這いを命じられたら、国王陛下に愛されました

新王セウリス・ガキア 5

10.



「! 俺も行く!武器持ったやつがいるんだよね!そいつらやっていい!?」

 セウリスの頷きに、殴られてからやる気がすっかり出なくなり、ボーっと椅子に座っていたオリヴェロが勢いよく立ち上がる

「‥‥‥急に元気にならないでください、オリヴェロ」
「駄目だ。近衛騎士もいるんだ。共闘だ」
「ええー‥‥。あっ、でもしょうがなかったらいいよね!」

 しょうがなかったらいい
 意味が理解できなかった周囲は?マークを顔に浮かべ、意味が分かった長い付き合いの友人らは思わずとそろって溜息を吐く

「‥‥ほどほどにしろよ/してくださいね」
「もちろん!」

 元気いっぱいに頷いたオリヴェロに珈琲のカップを片づけていた侍女からお可愛らしいと子供を見るような柔らかな慈愛の微笑み。ここにも子供モドキ

「――では、行きましょうか」
「あぁ。皆、ご苦労だった。明日も頼む」
「じゃっ」

 クレトは柔らかく微笑み、セウリスは重厚感ある国王の顔で、オリヴェロは侍女にニパッとした笑みをサービス
 執務室を出ると、既に近衛騎士数名と団長が待機していた

「――陛下、エイベルからの報告を聞き、参上いたしました」
「ご苦労
 いつも通りで頼む」

 セウリスの言葉に騎士団長は若干不服(不満)そうな顔をしながら言う

「陛下、くれぐれも御身を大切に。なにかあればすぐにお呼びください」
「ははっ、それはここで言う事じゃないだろうに」
「そうですな」
「では、行くか」

 少しこわばりが解けた騎士たちと側近を伴い、セウリスは自室に戻る


「‥‥‥ご苦労」

「「‥はッ!」」

 セウリスの自室前。扉の前に待機する衛兵たちに声をかけると緊張した面持ちで敬礼される。それは中に侵入者を引き入れたからか、それとも近衛騎士団長を引き連れた国王が目の前に居るからか。どうあれ、国家反逆罪にあたることは免れない。セウリスはすっと瞳を眇め、低い声で言う

「騎士団長、拘束しろ」
「はッ」
「‥‥は?ちょっ‥‥逃げろ!」
「‥‥‥ッ‥‥」

 騎士団長は率先して目の前の衛兵の首根っこを掴み、顔色を変え逃げようとしたもう一人の衛兵を近衛騎士数名が追いかけて捕まえる。時間にして約10秒の非常に素早い取り物であった

「――お前たち、不審者を陛下の居室に招き入れたな?」
「‥‥‥」
「‥‥なんのことだか」
「答えろ!」
「‥グハッ‥‥‥!」

 しらを切ろうとした衛兵の内一人を騎士団長が殴り、一喝。気取られない様に口を塞がれた片方が顔を青ざめさせ、コクコクッと激しく頷いた

「‥‥‥」
「‥‥‥度々、申し訳ありません、陛下。後日、将軍に厳しく教育するように――」

 あっさりとした自白に騎士団長は立ち上がり、ガッと膝をつき、(こうべ)を垂れた

「いや、いい。お前が謝ることではない」
「しかし‥‥‥!」
「この話は後だ、騎士団長」
「‥‥‥はッ」

 食い下がろうとする騎士団長を制し、今は侵入者を捕らえることが先だと伝える

「オリヴェロ、エイベル」
「はーい」
「はッ」
「行くか」
「‥‥陛下、くれぐれもお気をつけくださいませ」
「わかっている」
「陛下、気に居られましたら、そのまま寝台に入られても構いませんよ」
「‥‥‥」
「オズヴァルド卿!」

 最後の最後で側近にそれとなくどころかはっきり言われたセウリス
 クレトは騎士団長に大声で咎められるが食えない笑みを浮かべたまま、セウリスを見つめる
 セウリスは思いっきり視線をそらしたまま無言で部屋に入った

「はぁ。‥‥なにを笑ってる、オリヴェロ」
「別にぃ~」
「‥‥‥」

 無言の視線にオリヴェロは尚もにやにやと笑ったまま

「オリヴェロ‥、」
「邪魔だったら言ってね、陛下」
「オリヴェロ令息!」

 こいつも一緒だった
 そんな顔でセウリスは暗がりの中、並べられた見合いの釣書でもみるような目を知らず、オリヴェロに向けた
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