愛おしき者
別に行くあてもなく、私は真っ直ぐに家に帰った

どこにでもある住宅街の、どこにでもある賃貸のアパートへ…

帰っても、誰が待っている訳でもない

ただ、女1人が生活する為に、必要最低限の物が収納されてるだけ…

そんな、何もない部屋に帰る時だけ、私の足取りは軽くなる

そこにいる時だけ、私は心から安らぐ事が出来た…

誰かに気を使う訳でもなく、誰にも邪魔されない…

私ひとりの、私だけの場所…

アパートの階段を上がり、自分の部屋の鍵穴にキーを差し込み回す…

ガチャっと、音をたてて施錠が解除され、私は扉の向こうに体を滑り込ませた
< 6 / 29 >

この作品をシェア

pagetop