親友に夫を奪われました

10 愛する人との結婚

 私とアロイス先輩はお互いが離婚して、約束どおりにお付き合いが始まった。ウィドリントン宝石店の勤務が終わる頃には必ず宝石店までお迎えに来てくれる。

「もう偶然を装う必要がなくなったから堂々と店内で待っていられるよ」
 待っている間にも私に似合いそうだと、宝石を見てまわり購入しようとするから冷や汗が流れた。

「アロイス先輩。ここはとてもお高いのですよ」
「あぁ、わかっているよ。でも、大事な女性には宝石を贈りたくなるよ」
「アロイス様なら割引きますよ」
 支配人が茶目っ気たっぷりに笑った。

「学生時代からずっとロレーヌが大好きでした。だから、こうして恋人同士になれたことがありがたくて、これからが青春だと思っているんです」
「ほぉ、微笑ましいですな。ロレーヌさんは当店のトップセールスウーマンですよ。いずれは店長を任せたいとオーナーもおっしゃっていました。お二人とも本当にお似合いですね」
 支配人が私達に微笑みながらそう言った。

 アロイス先輩はわかっていない。私は先輩からいつも言葉の宝石を貰っているのよ。『学生時代からずっと大好きだった』『恋人同士になれたことがありがたい』これらの言葉はどんな宝石より価値がある。だから私は、アロイス先輩のお財布をポケットにしまわせた。

「私はすでに持ちきれないほど、アロイス先輩から宝石を貰っています。それは心の中が温まる最高の宝石で、思いやりと愛に溢れた言葉です。アロイス先輩がいつもくださるから心が満たされて、私は身を飾る必要がないのです」

「ちょ、ちょっと、待ったぁーー。ロレーヌさん、うちのトップセールスウーマンが宝石を否定しないでくださいよぉーー・・・・・・まぁ、ロレーヌさんらしいですけどね」
 支配人は呆れ、アロイス先輩はクスクスと笑った。




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 教会に敷き詰められた赤い絨毯をゆっくりと歩く。厳かな音楽とともに歩を進めれば列席者の人々が「なんて綺麗な花嫁花婿様でしょう。とても美男美女ね」と囁く声がした。

「アロイス先輩。今日のお化粧と、素敵なウェディングドレスのお蔭で、私はとても過大評価されていますわ」
「いや、正当な評価だよ。わたしのロレーヌはどこから見ても美女だから」

(うん、アロイス先輩の目は私への愛ですっかり曇っている)

 最近はいつもこんな調子だから慣れてしまった。どうやらアロイス先輩の目に、私は絶世の美女として映るらしい。愛が溢れすぎてちょっと怖い。

「私たちは本日、ご列席の皆様方の前で結婚を誓います。これから私たちは、思いやりの心を大切にして、困難な時も、幸せな時も励まし合いながらお互いを信じ、力を合わせて協力していくことを誓います」
 声を揃えて一緒に誓い合う形式にした。これからはなんでも二人で力を合わせて、支え合って生きていきたかったから。私はこの少しお人好しで、でも誰よりも優秀な男性の妻になる。


 私を一途に愛してくれたアロイス先輩、大好きよ!


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