ワケありモテ男子をかくまうことになりました。
「馬鹿!!!」
驚いて思わずゆいを見上げると、俺の肩を強く掴み、悔しそうに唇を引き結んで震えていた。
「ゆ、い……?」
「もしかして、私のお兄ちゃんが死んだのは自分のせいだって思ってるんじゃないでしょうね! だから学校でもあんな態度で、……でも、それじゃあどうして私の前だけ明るく振舞うの……? もう、何がなんだか分からないよ」
こんなに取り乱しているゆいを初めて見た。
俺は目元を腕で擦って、ゆいをまっすぐに見つめる。
そして、これまでのお詫びの言葉を口にした。
「──あの雨の日。俺を助けてくれたゆいが雨宮さんの妹だって分かってた。それでも、もう自分を偽るのは限界で……本当の自分をゆいに見せたんだ。俺は幸せになっちゃいけない人間なのに、ゆいの側で幸せを感じてた。最初はゆいのお兄さんのことを謝ろうって気持ちで側にいたんだ。だけどずるい俺は、ゆいとの距離が近づいていくうちにそのことを打ち明けるのが怖くなった」
「ゆい、これまでずっと秘密にしてきて、本当にごめん」
俺は深く、深く頭を下げた。
❥❥❥
犬飼くんから打ち明けられたすべてのことが頭の中で渦のようにぐるぐると回っている。
犬飼くんは私に謝罪した後、家を出ていこうとした。
だけど私はそれをとっさに止めてしまった。
どうしてそんなことをしたのか分からない。