君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 起き上がると、私は自分の掛け布団を聡一朗さんにそっと掛けた。

 皺を整えようと手にしたジャケットは冷たかった。
 この時期は、まだ夜は冷える。
 一晩ずっとこうしていてくれていたのなら、今度は聡一朗さんが風邪をひいてしまう。

 どうしようもなく申し訳なく思う一方で、嬉しさで胸がじんじんと高鳴っていた。

 聡一朗さんが、ここまでしてくれるなんて。

 想われていなくていい。
 不自由なく生活させてもらえて、大学に行かせてもらえれば、もうそれだけで十分だと思っていたのに……。

 抑えがたい気持ちを堪えるようにぎゅうとジャケットを抱き締めると、不意に聡一朗さんが身動ぎした。
 セットが乱れて顔に落ちていた前髪が揺れて、ゆっくりと目が開く。
< 132 / 243 >

この作品をシェア

pagetop