君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
「……もう、起きていいのか?」

 私の姿を認めるなり発せられた低い声は、掠れていてひどくセクシーだった。
 ドキドキしながら私はうなずく。

「はい、一晩よく眠ったら楽になりました」

 ドキドキはキュンとする痛みに変わる。
 聡一朗さんが穏やかな微笑みを浮かべたからだ。
 朝日に溶けこむような、とても優しい笑みを。

「そうか、なら熱はもう下がったんだな」
「……あ」

 ひんやりとした手が伸びて、私のおでこに触れた。
 そしてゆっくりと移動して、頬に触れる。

 熱を確かめる動き。
 だけれど、恋人に触れるような、どこか甘くて、愛のこもった触れ方。

「うん、下がっているな。安心した」
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