君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
一気にしゃべったけれども、もうなにを言っているのか自分でも分からなくなってきた。

こんなエリート教授先生にお渡しするのが手作りクッキーだなんて、考えてみたら失礼にもほどがある。

なんでこんなものを持ってきてしまったんだろう、と穴に入りたい気持ちになっていたけれども、

「ありがとう、いただくよ」

聡一朗さんは受け取ってくれた。

「では私はこれで。本当にありがとうございました!」

と、逃げ出すように去ろうとしたけれど、

「あの君、ちょっと待ってもらっていいかな」

なんと聡一朗さんが引き留めてくれた。

思わぬ展開に戸惑っていると、聡一朗さんは部屋の奥に戻り、一冊の本を手にして来た。

それに私は目が釘付けになる。

この間一緒に見惚れていたもう別の絵本だった。

「よかったら、これも読むといい。また私に返せばいいから」
「……」
「次回はお礼はいいよ。君の向学心に役立ててほしいだけだから」
「ありがとう、ございます……」

遠慮するべきなのに、私はつい引き寄せられるように絵本を受け取ってしまった。

だってこれも本当に素敵な装飾で、しかも貸してもらったものと同じ作家さんだったんだもの。
すっかり気に入ってしまって、この方の作品をまた読みたいと思っていたところだったから。
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