君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
「あの、関係者控室ってどこに行けばいいかご存知ですか?」
「ああ、それなら分かるわ。私も今までそこにいたの」

 紗英子さんはにっこりと笑って、

「案内してあげるわ。着いてきて」
「わぁ、助かります」

 ほっとしながら私は彼女の後をついて行った。

 あたりには、まだ談笑している人たちが立っているけれども、歩きすがら見える講堂内では、すでに大勢の人が着席していて開始を待っている。
 数百人……は来ているようだ。

 ああ、今回の受賞ってすごいことなんだな、といまさら聡一朗さんの快挙に感激する。

 私はただ関係者席で座っていればいいだけなんだけれど、なんだか緊張してきた。
 聡一朗さん、どんなスピーチをするんだろう……。

 なんていろいろ考えて歩いていて気に留めていなかったけれども、もう一、二分近く歩いていた。

 講堂からもだいぶ離れてしまっている。

 関係者控室って、こんなにはずれにあるものなのかな……?
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