君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
「やっと気付いたから。君がいなければ、俺は本当にすべてを失ってしまうということに」

 目を丸くする私を、聡一朗さんはじっと見つめた。

「凌から、姉の話を聞いたんだろう?」
「えっ」
「さっきあいつから連絡が来ていた。すまないな、今日あいつが来ることを、すっかり忘れていたよ」

 聡一朗さんは苦笑いした。

「あいつにも怒られたよ。『今のおまえには美良ちゃんがいなくてはだめなんだ。だから絶対に失うな』ってな」

 柳瀬さんが、そんなことを……。

「俺もようやく、あいつの言う通りだと気付いたよ。君を失ってしまえば、俺は姉の死以上に苦しんで、そして自分をもっと嫌いになってしまう」

 熱い愛を宿した瞳で、聡一朗さんは私を真っ直ぐに見つめた。

「愛している、美良。心の底から」

 そうして見せてくれた笑顔は、閉ざしてしまった心を開放し初めて見せてくれた、喜びと幸福に満ちたものだった。

 なのに、私はそれをぼやけた視界でしか見ることができない。

 嬉しくて、涙が止まらなくて。

 代わりに私はうんうんと何度もうなずいて、震えた声で伝えた。

「私も聡一朗さんを愛しています。あなたと出会えて、あなたと結婚できて本当に幸せです」

 温かいぬくもりに再び包まれ、私も力強く抱き締め返す。

 私たちの唇は惹かれ合うように自然と合わさっていた。


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