君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
2,契約結婚生活のはじまり



どうして、こんなことになったんだろう。

タクシーの中、鍵を握りしめる私の脳裏をずっとよぎっているのは、そんな戸惑いの思いだった。

『俺と結婚して欲しい』

唐突な申し出に混乱するばかりの私に、聡一朗さんは噛んで含めるように説明してくれた。

『意外に思うかもしれないが、教授職と言うのは人付き合いが重要でね、同じ分野でもそうだし別分野の関係者との交流も頻繁に行われている』

そこから研究が進んだり、新しいプロジェクトが始まったりすることがよくあるそうで、いかにコミュニケーションをとるかがキャリアを形成する上でも重要になってくるという。

となればプライベートの交流にも及んでくるわけで、そうなるとやはり配偶者がいた方が効率がいいというのだ。
配偶者同士のつながりから研究が発展することも、まれではないらしい。
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