君という鍵を得て、世界はふたたび色づきはじめる〜冷淡なエリート教授は契約妻への熱愛を抑えられない〜
 低い硬質な声が聞こえて、後ろを振り返った。

 聡一朗さんが立っていた。

 帰ってきた物音に気付かなかった――と驚くのと同時に、聡一朗さんの表情を見て焦りを覚える。

 怒っている……?

 そう思ってしまうほどに、聡一朗さんの顔は複雑に強張っていた。

 怒っている――ようにも見えて傷ついているようにも見えるその顔は、まるで遺品に触れることが自分の傷に触れられるかのように、苦痛めいた感情をにじませていた。

 無表情が常の聡一朗さんの思いもよらない反応に、私は動揺してあとずさる。

「ごめんなさい、気になってしまって、つい……」
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