【短編】かわいく、ワルく、甘く愛して。
可愛いくてワルい誘惑
 累さんの申し出は断ったけれど、私が彼の“唯一”であることは変わらない。

 それがどういうことなのか、私はすぐに理解した。

 ううん、させられた。


「那智さん、分からないことがあったら聞いてくれよ?」


 みんなの前では生徒会長として今まで通りデキる先輩を装ってるけれど……。


「これ、ケガで入院しちゃった前の書記が残していった仕事なんだ。……手伝おっか?」

「っ⁉」


 他の人から見えない状況のときは、わざと下から覗き込むように聞かれて……。

 くっ! その角度は反則だよ!

 上目づかいの表情はひたすらかわいくて私の母性本能をとことんくすぐってくる。

 真っ赤になる私を見て小さくクスッて笑ってるから、絶対狙ってやってるし!


「だ、大丈夫ですよ」

「でもこことか分かりづらいだろ? それとも俺じゃあ頼りないかな」


 犬耳でもあったらペタンと垂れ下がっていそうにシュンとした顔までされて、わざとだって分かっているのにキュンキュンする胸が止められない。
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