【短編】かわいく、ワルく、甘く愛して。
「俺の“唯一”……もっと血をくれよ。俺だけのになって……那智」


 ワルい顔をした可愛いヴァンパイアは、愛を乞うように私の血を乞う。

 意地悪そうだけど、私好みの顔に迫られて、私は……。


「っー! お断りしますっ!」


 思い切りドンッと突き飛ばして、累さんから逃げた。

 押し倒しはしても、力づくでどうこうしようとは思っていなかったのかもしれない。

 案外すんなり逃げることが出来た。

 そのまま私は空き教室からも出て逃げる。


 違反者が累さんじゃなくて、他にもヴァンパイアがいるというなら違反者が誰なのか探さなくちゃならない。

 協力してくれるなら助かるかもしれないけれど、血が欲しいって言われてあんな風に迫られたら心臓がいくつあっても足りない!

 暴れ馬のように鳴り響く心音は、自分では抑えきれなかった。
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