【短編】かわいく、ワルく、甘く愛して。
不審
 チュッチュッと、頬や目蓋、耳にとキスが落ちてくる。

 探るようなそれは、最後に唇へと到達する。

 軽く触れて、私が抵抗しないことを確認するとキスは深くなっていった。


 ダメだと心の中では思うのに、累さんのキスに溺れてしまった私は抜け出せなくなっている。


「可愛い……那智」


 甘い声にも理性が溶かされてしまって……。


「る、い……さん……」


 思わず応えるように彼の名を呼んでしまう。


 初めてキスを受け入れてしまった日から、毎日のように二人きりになったときキスをしている。

 最初はダメですって言うけれど、あざと可愛く「いいだろ?」と上目遣いでお願いされたら突き放せなくて……。

 強くダメだと言えないでいると、指先とか髪とかに優しくキスをしてくる。

 それがまた気を引こうとしている小さな子どもや小動物に似ている感じがして、ほだされてしまってるんだ。


 ほだされて、キスを受け入れて……毎日可愛いって言われていたら、当然のように心も受け入れてしまっていた。

 元々嫌ってはいないし、好みの可愛い顔。

 こんな状況で好きにならないなんて無理だった。
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