【短編】かわいく、ワルく、甘く愛して。
 違反吸血っていうのは本人の許可なく血を吸うこと。

 ヴァンパイアには、人を襲わないためにと血液パックがハンター協会から支給されている。

 だから生き血を吸わなくても生きていけるはずなんだ。

 それでも生き血の方が美味しいらしく、様々な理由はあれど生き血を吸うこともある。

 なので本人の許可があれば吸ってもいいことになっているんだけれど、今回は無差別な上に吸われた人はヴァンパイアの能力である催眠術で記憶を消されている。

 吸い跡が残っているからわかったけれどこれは明らかに違反だと、少し前にこの学校に教育実習という名目で来ていたハンターが発見した。

 教育実習期間でそれが生徒会役員の誰かだって所までは突き止めたらしいけれど、“誰か”を突き止める前に期間終了してしまったため、今度は実際に通える年齢の私に依頼が回ってきたというわけ。


「なんにせよ優秀な人は歓迎するよ」


 依頼内容を思い出して気を引き締めようとした直後、累さんのかわいい笑顔にへにゃぁって溶かされてしまう。

 可愛いものが好きな私にはこの笑顔は最高の癒しだ。


「ありがとうございます」


 お礼を笑顔で受けながら思う。

 依頼はちゃんとこなすけれど、たまにはこういう癒しも必要だよね。
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