先輩を可愛い、かわいいと言っていいのは僕だけです
「ちょ、っ、ここお店だよ?」

 顎を固定され、周囲を警戒する動作を封じられた。

「先輩、これを買ったらお揃いの物を探しませんか?」

 小首を傾げ、これは本宮君的なおねだりのポーズ。対わたしに絶大な効果を与える。

「お揃い?」

「服でもアクセサリーでも、安くてもいいんです。同じ物を身に着けてバーベキューに参加したいです」

 どうやら本気で我が家と涼介の家とで毎年やるバーベキューへ参加する気らしい。それはつまり両親に紹介する事にも繋がるのだけれど、本宮君は構わないみたいだ。
 冷やかされはするけど、本宮君の参加を両親や涼介のおじさん達は歓迎すると思う。

「お揃いかぁ」

「抵抗あります?」

「全然ない、逆に嬉しいの。ありがとう」

 おねだりされなくとも、わたしから提案したいくらい。

「ごめんなさい、あまり高い物は買えませんよ?」

「本宮君も言ってくれたよね? 値段じゃない。お揃いだからいいんだ」

 幸せだと笑うと壁ドンは解除され、頭をポンポン撫でられる。

「本宮君?」

「先輩は可愛いなって思って。本当にかわいいです」

「あ、ありがとう」

「はは、手、繋ぎましょう?」

 差し伸べられた手を取り、繋ぐ。
 本宮君の手は大きくて守られている感じがする。実際、涼介の取り巻きや本宮君のファンの子から絡まれる機会も減った。

「涼介が意地悪してごめんね? 涼介ってば本宮君は腹黒いとか、闇深いとか適当な事ばかり言うから。バーベキューの件だって自分の口から知らせたかったのに」

「……そうなんですね」

「怒った? 涼介とは本当に何でもないよ?」

「もちろん、先輩は信じてます。バーベキュー用に虫除けスプレー買っておきましょう」

 と言い、特大スプレーがカートへ入れられた。
 ちなみに精算時に翳した携帯の待ち受けはヒマワリとわたし達のスリーショット。本宮君の満面の笑顔が気に入っている。

 本宮君の優しい所をみんなに知ってもらいたい気持ちは今もあるにはあるけど、独り占めしたいと欲張りな所もあって。

「荷物を一旦置いてから、見に行きましょう」

「うん!」

 この時のわたしはお揃いのアイテムに思いを馳せており、後に腹黒王子のバーベキュー事件と語られる出来事を体験しようとは考えもしなかったんだ。

 ーーそんなバーベキュー事件の話はまた別のお話で。

おわり
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