先輩を可愛い、かわいいと言っていいのは僕だけです
「一緒に初めてする外出がこんな感じでいいのかなって」

「僕は先輩と出掛けられるなら何処でもいいですよ。先輩目的で園芸部に入りましたが、今は草花が好きなんです」

 目当ての商品を軽々カートに乗せていき、爽やかに微笑む。発言と相まってか、Tシャツとデニム姿が妙に大人びる。

「……」

 もちろん、わたし切っ掛けで草花に興味を持ってくれたなら嬉しいし、部員として頼もしい。
 こちらは先輩ぶって初デートは遊園地だ映画館だのと言ってしまい、なんだか悔しいじゃないか。

「ん? どうかしました? 遊園地や映画に行きたいならチケット取りますよ?」

「取らなくていい。行きたいけど、行きたくないから」

 こういう部分こそ、子供っぽいと自覚はある。本宮君は困った風な眉の下げ方をして、それがまた様になり格好良い。

「じゃあ、お祭りは? 花火を観たり、夏らしい事をしません?」

「……それはしたい、かも。浴衣着て屋台を回りたい」

「良かった! 浴衣姿の先輩、可愛いんだろうな。今から楽しみです」

 今でも信じられなくなる時はある。こんなに優しく包み込んでくれる人が彼氏なんて、と。

「あぁ、夏らしい事といえばーーアイツと家族ぐるみでバーベキューやるなんて絶対に駄目ですからね。僕も呼んでくださいよ」

 ついつい見惚れてしまい、はっと我に返る。

「な、なんで知ってるの?」

「アイツがいちいち自慢しに来るんですよ。はぁ、悪い虫はいい加減どうにかしないと。先輩、殺虫剤もみていいですか?」

「殺虫剤? え? え? えぇー!」

 本宮君が急に方向転換して奥の棚へ行ってしまう。
 わたしも急いで追いかけると物陰に引き込まれ、そのまま勢い良く壁に押し付けられる。
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