先輩を可愛い、かわいいと言っていいのは僕だけです
「おーい、向日葵!」

 そんな時、涼介が声を掛けてきた。

「相変わらず土いじりか? 地味だなぁ」

 朝練を終えた涼介がスポーツドリンクを煽りながら花壇へやってくる。興味がなさげに見回し、鼻を鳴らす。

「はぁ、うちのマネージャーをやらないで園芸部に入るなんてもったいない」

 わたしは中学ではサッカー部のマネージャーをしていたが、高校でやろうと思えなかった。
 理由は言わずもがな、涼介を取り囲む女子達。今も涼介の後をつけてきて、こちらを睨む。メイクバッチリの目元は迫力があって、作業で汗ばむわたしは俯く。

「しつこいな、またその話? 地味だろうと頑張ってるの。邪魔しないでよ」

 涼介の活躍を期待してるし応援している。けれど昔のようには見守れず、素っ気ない態度を取ってしまう。

「んだよ、邪魔って。せっかく話し掛けてやったのに!」

 話し掛けてやった、頼んでもいない事を上から目線で告げられカチンときたーーが、女の子等にクスクス笑われて言い返せない。

《涼介君が気に掛けるからどんな子かと思ったら、全然可愛くない》

 いつか彼女等に言われた言葉が頭の中に響く。
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